日常をまったり紡ぐ近未来的日記..紅子の世界全壊です!       週末はオリジナルラノベの更新もしています


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紅子 縁璃

Author:紅子 縁璃
座右の銘は常に笑顔!
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恋するメドゥサ -31-
恋するメドゥサ -31-
 
 
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 
 感情が爆ぜた。
 普段のクールで理知的な彼女からは想像できない有様だった。
 ただ大粒の涙を流しつつ、床を何度も拳で叩く。
 
 ごとり。
 秀直の手から銃が滑り落ちた。
 
「くそぉ」
 
 苦痛に顔を歪め、よろよろと後ずさる。
 押さえた右肩から血がこぼれ、足元に赤い斑点を生んでいく。
 
「永原! 終わりだ! 抵抗するな!」
 
 いつの間にか開いていたドアから、特殊捜査班の刑事、関目 和宏が一喝。
 続いて数人の男達が駆け込んできた。誰もが油断なく秀直に拳銃を向けている。
 
「解った。もう、何もしない。できない」
 
 撃たれた右腕が動かず、無事な左手を挙げて降伏の意思を表した。
 
「菜留くん!」
 
 急展開に呆然としていた沙々子が我に返った。
 ぐったりと伸びている菜留に這い寄る。
 
「菜留くん! しっかりしたまえ!」
 
 身体を揺すられて、菜留がゆっくりと目を開けた。
 心配そうな沙々子になんとか笑顔を作る。
 
「終わったんですね」
「あぁ。全て君のお陰だ」
「もう少しカッコ良くいけると思ってたんですけど」
「そんなことはない。カッコ良かったぞ。誰よりも」
「ありがとうございます。なんとか約束を守れました。痛たた」
 
 安心したら痛みが一気に戻ってきた。
 身体中が軋むし、顔のあちこちが熱い。
 
「こっぴどくやられたな。酷い顔だ」
「酷いのは姫先輩もですよ。目なんて真っ赤ですし」
「こ、これは君が心配を掛けたからだろう」
 
 残っていた涙を指先で払うと、ぷいっと顔を逸す。
 
「邪魔をするようで悪いがな」
 
 和宏が割り込んできた。
 その手には既に回収した秀直の拳銃がある。
 
「銃を持った犯人と対峙するなんて無謀も過ぎる! 証拠を突きつけて犯人が大人しく諦めるなんてのは、小説や漫画の中だけなんだぞ!」
 
 大声で叱責されて、菜留と沙々子は揃って肩を竦めた。
 
「ともあれ、一件落着だ。おい、誰か無謀な探偵達に手当てをしてやれ。生徒達も順次下校だ」
 
 事実上の終了宣言。誰もが微かに緊張感を緩めてしまった。
 その時。
  
「おい! 永原!」
 
 刑事のひとりが声を上げた。
 
 秀直が捕らえられていた手を強引に解いたのだ。
 
 全員の視線が即座に集まる。
 それらに応えるように秀直が左手を高々と挙げた。
 ボタンがひとつだけ付いた掌サイズの箱が握られている。
 
 それが何を意味するか、みんな瞬時に悟った。
 
「校舎を倒壊させるくらいの爆薬は仕掛けてある! 全部終わりにしてやる!」
「永原! 止めろ!」
 
 和宏が叫ぶが、秀直は一切の躊躇もなくボタンを押した。
 
 次に起こるであろう事態を想定し、誰もが身構える。
 
 沙々子も菜留に覆いかぶさった。今できる精一杯の行動だ。
 
 しんと水を打った状態。
 誰かの時計が刻む秒針の音だけが、信じられない正確さで時間の経過を告げる。
 五秒、十秒、二十秒。
 だが、爆発はおろか、物音ひとつしない。
 
「こんなはずは」
 
 秀直の喚きが最初だった。
 何度もボタンを押すが、やはり反応はない。
 
「秀直さん、爆弾は全部解除させてもらったんすよ」
 
 司がドア口に立っていた。
 ここまで走ってきたのだろう。肩で大きく息をしている。
 
「どういうことだ?」
「所詮は素人の作ったもんすよ。受信装置を外せばいいだけ。楽勝っした」
「そんなことを聞いてるんじゃない」
「仕掛けた場所を知ってる奴が協力してくれたんすよ。各校舎に数個ずつですからね。手分けすれば数分で……」
「そんなことを聞いてるんじゃない!」
 
 秀直が握っていたリモコンを床に叩きつけた。
 
「君は千博のことを想ってくれていたはずだ! それなのに! どうして!」
「秀直さんの気持ちは解ります。でも、こんなの違うっすよ」
「何が違う!」
「あの事故は……」
「事故なんて言うな! あれは事件だ! 千博は殺されたんだ! この学校に!」
 
 事故と事件。
 一般的に不測の事態から損害が発生する物を事故。故意に損害を発生させた物を事件と呼ぶ。
 本来なら事故は事件に含まれるが、暗黙の了解として分けて捉える場合が多い。
 
 微妙な言い回しの違い。しかし菜留が秀直を犯人であると睨んだのは、その単語だった。
 事件であれば引き起こした犯人が存在する。
 復讐者という名乗りは、未だに罰せられていない犯人に対しての報復を含ませているのではないか。
 
 それは沙々子にない発想だった。
 その視点に立った時、全てのパーツが繋がった。
 言うなれば、菜留の直感と沙々子の思考が噛み合わさって辿り着けた真実だ。
 
「君までそんなことを言うのか! 君は、君だけはあいつの恨みが解ってくれると信じていたのに! 所詮は赤の他人だな! あいつのことが解るのは僕だけだ!」
 
 赤の他人と呼ばれ、司が苦々しげに顔を伏せる。
 
「そうだ。僕だけだ。僕には裁く権利があるんだ! 罪を償わせてやるんだ!」
 
 感情のままに吐き出された重い言葉は、この場にいる全員を黙り込ませてしまう。
 
「違います」
 
 はっきりとした否定だった。
 
「それは違います」
 
 繰り返しながら、ゆっくりと身体を起した。
 
「な、菜留くん?」
 
 沙々子が思わず呟く。
 彼の瞳に映る強い意思が、普段の穏やかで頼りない彼とは別人のように感じさせたからだ。
 
「なんだお前! お前なんかが口を挟むな! 千博のことを知りもしないくせに!」
「でも、あなたが間違っているのは解ります」
 
 あくまで落ち着いた口調だった。
 
「なんだと! お前なんかに何が解る!」
「本当に千博さんが、こんなことを望んでいるんですか?」
「あたりまえだ!」
「じゃあ、千博さんは自分の兄が殺人鬼になることを望むような人だったんですね?」
「バカを言うな! 千博は……」
 
 反射的に答え、喉を詰まらせる。
 
 亡き妹への想いと自分の主張。
 相反するふたつが、今まで信じてきた自己の正当性を根底から揺るがした。
 
「……千博はそんなことを願う人間じゃない。千博はそんな……」
「じゃあ、あなたは誰のためにこんなことをしたんですか?」
「そ、それは……」
「自分のため。自分の恨みを晴らすためでしょう」
「違う!」
「違わない。あなたは自分の行動を正当化するために、千博さんの死を利用してきた」
「違う! 違う! 僕は!」
「違わない! あなたは千博さんの命を冒涜した最低の人間だ!」
 
 厳しく断じられ、秀直の頭が落ちた。
 
「僕は、僕はただ……」
 
 ただ床を見つめるだけの秀直に、菜留が告げる。
 
「償ってください。千博さんの命を冒涜してきたことを。千博さんのために」
 
 秀直が微かに頷いた。ように見えた。
  
 
                       * * *
  
 
「お嬢さんには色々と面倒を掛けてしまったようじゃな。感謝しておるよ」
 
 穏やかな表情で和服姿の老人が告げた。
 顔には深いシワが刻まれ、頭髪はすっかり白くなりボリュームも減っている。
 それでも姿勢良く、どことなくエネルギーに満ちた雰囲気がある。
 
「いやいや。どもども」
 
 真希乃がぺこぺこと頭を下げる。滑稽なくらい恐縮しているのが解る。
 
 不意打ちだった。
 当日の遅くに家まで訪ねてくるなんて思いもしてなかった。
 
「お嬢さんの件じゃが手は打っておいた。あやつが何を言おうが、お嬢さんが罪に問われることはないじゃろう」
「それは、どうもありがとうございます」
 
 もう一度深々と頭を下げてから。「あの、それはそれとしてですね」と切り出した。
 
「見返りみたいなもんがあるのかなぁ、とか期待してるんですけどぉ」
「ふぉふぉふぉ。面白いお嬢さんじゃな」
 
 実に嬉しそうに笑い。
 
「じゃが、欲をかき過ぎると痛い目に遭うこともあるでな」
 
 その言葉に反応して、老人の後に控えていた黒いスーツ姿の大男がふたり、半歩踏み出した。
 流石の真希乃も顔が強張る。
 
「冗談じゃ冗談。お嬢さんは罪を問われず、ワシの方は孫が無事に帰ってきた。十分な結果だと思うがの」
「でもアタシもそれなりに苦労っていうか。危ない橋を渡ったっていうか」
 
 なんとか食い下がる。
 計算高く生きる真希乃にとっては、譲れない線があるのだ。
 
「そう言えばお嬢さんは絵を描いておるらしいの。コンクールで何度も賞を取っておるとか」
「そそ、そうなんですよぉ。でねでね、今度、全国規模のコンクールがあってぇ。これに入賞できれば、まずは安泰っていうかぁ」
「ほうほう。ひょっとしてワシの口添えを期待しておるのか?」
「はい!」
 
 力強く即答する真希乃に、老人は心底愉快そうな表情に変わる。
 
「素直でいいのぉ」
「もうね。センセイの口添えがあれば、受賞間違いなしかな、なんてね」
 
 あからさまな要求に、黒スーツの男達は呆れを露にする。
 
「残念じゃがそれは無理じゃ」
「なんで?」
「文化や芸術というのは難しくてな。誰が何を言ったところで、実力のない物が分不相応な結果を得ることはないのじゃ」
「だって……」
 
 絵画界は色々と公にできない事がある。犯罪に繋がる重大な事だ。自分はそれを握っている。
 お前が協力するなら、どんな賞でも取らせてやろう。
 
 秀直が持ちかけた取引だった。
 
 真希乃だって最初から信じたわけじゃない。
 しかし彼女の要求する通り、コンテストでの受賞が続いた。
 利用するには十分と踏んだのだ。
 
「騙されておったんじゃな。そもそも警官風情にそんな真似ができるはずもなかろう」
「あんのクズ野郎が」
 
 ぎりぎりと奥歯を噛み締める。
 欲に目が眩んで、あっさり騙された自分にも腹が立つ。
 
「安心せい。今までの結果はお嬢さんが実力で勝ち取った物じゃ。しかしの」
 
 すうっと笑みが消えた。
 威圧的な目で真希乃を睨みつける。
 
 老人の孫。妖女とあだ名される少女が持つ瞳とは異質の瞳だった。
 利己的な信念に満ち、そこには正義や情なんて物が欠片も存在しない。
 
「逆は可能じゃな。実力者を賞から遠ざけるのは難しいことではない。絵を描けなくする方法は色々とあるしな」
 
 ごくりと真希乃が喉を鳴らす。
 
「じょ、冗談よね」
 
 掠れた声に老人が口元を緩めた。
 威圧感は瞬く間に霧散。好々爺と言った雰囲気に変わる。
 
「もちろんじゃ。これからも孫の良き学友として、側にいてやってくれ」
 
 そう残すと踵を返した。
 振り返る事もなく、停めてあった車に乗り込む。
 
 車が視界から消えたのを確認して、真希乃は大きく息をついた。
 途端に膝が抜けて座り込んでしまう。
 
「あれはダメだ。危なすぎる。あのジジイに比べると、姫堂先輩なんてガキもいいとこだよ」

 
 

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