日常をまったり紡ぐ近未来的日記..紅子の世界全壊です!       週末はオリジナルラノベの更新もしています


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紅子 縁璃

Author:紅子 縁璃
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恋するメドゥサ -27-
恋するメドゥサ -27-
 
 

                       * * *

 怒涛の波状攻撃に、沙々子が決死の防戦をしていた頃。
 志穂は夕食を終え、自室で復習中だった。
 デスクの隅で携帯が、ぶるるるっと震えた。
 
 いきなりの電話に不快感を露にした志穂だったが、ディスプレイに浮かんだ名前に慌てて耳に当てる。
 
「も、もしもし」
 
 上ずる声を懸命に抑える。
 
「志穂、菜留だけど。ごめんね。こんな時間に」
「ううん。私もテレビ見てただけだから。でも、菜留から電話なんて珍しいわね」
 
 菜留は余程緊急の用でない限り電話をしてこない。
 掛けるのはいつも志穂からだ。適当な用を見つけては電話をするようにしている。
 そんな健気な所に、一向に気付いてくれないのが辛い。

「で、何の用なの?」
 
 意識し過ぎて、少し邪険な言い方になってしまう。
 
「実はちょっと相談したことがあって」
「な、なに?」
 
 先日の映画の苦い思い出が脳裏をかすめ、声が硬くなる。
 
 少し間があった。
 菜留の重い雰囲気に、志穂は浮かれた気分を捨てて続きを待つ。
 
「あのさ。凄く仲の良い友人がいたとして。その友人にどうしても聞き辛いことがあって。でも、どうしてもそれを聞かないとダメなんだ。そんな時さ、どういう聞き方をすればいいんだろう?」
「それって、ひょっとして」
 
 誰を指しているのか、志穂には解った。
 伊達に長い時間を過ごしている三人じゃないのだ。
 
「ううん。なんでもない。えっと、聞き辛いことをどう聞くかだよね」
「きっと相手に嫌な想いをさせることになるんだ」
「聞かずに済ませる、ってわけにはいかないの?」
 
 再びの沈黙。
 数秒の時を置いて、「うん」と控え目な声が返ってきた。
 
「そっか。じゃあ、ストレートに聞くしかないよ。でも、電話とかじゃダメ。ちゃんと会って聞くの。もちろん、理由もきちんと説明するの。なんでそんなことを聞くのか」
「でも」
「それができないなら、聞かずに済ませるべきかな。だって、その程度の話ってことでしょ」
 
 あえて突き放すような言い方で背中を押してみる。
 
「相変わらず志穂は厳しいね」
 
 苦笑交じりの声は、少しだけ元気になっていた。
 どうやら心は決まったようだ。
 
「大丈夫。絶対に解ってくれるから。菜留が考え抜いて出した結論だって」
「うん。ありがとう」
 
 それから二、三語交わして携帯を置いた。
 
 ふうっと一息ついて復習に戻った。
 次のテストでは絶対、沙々子より上位になってみせる。執念に近い決意をしていた。
 
「なんのかんのと言って。困ったら私を頼ってくるのよね。まだまだ全然有利って感じよね」
 
 ここはじっくりポイントを重ねて持久戦で勝つのだ。
 
 
                       * * *
 
 
「こんな時間にどうしたんだよ」
 
 尋ねてきた菜留を、司はいつも通りの調子で出迎えた。
 
 司の自室は手狭な四畳半。
 畳敷きの古風な感じだ。几帳面に整理整頓されており、掃除も行き届いている。
 
「いつ彼女が尋ねてきても問題ないようにしてるからな」
「まだできてないのに」
「常に万が一の状況に備えるのが俺のスタイルなんだ」
「ははは、万が一の状況ね」
 
 苦笑しながら腰を下ろす。
 小型テーブルを挟んで向かい合う形になった。
 
「で、菜留。なんの用だ? わざわざ押しかけてくるんだ。かなり大事な話なんだろ?」
「うん。それなんだけど」
 
 どう切り出すべきか。つい視線が下に落ちる。
 
 そんな菜留の態度に司は苦笑いを浮かべた。
 
「なんだ? 例の脅迫事件のことか? 俺が怪しいと思ってんのか?」
「それは」
 
 思わず言葉に詰まる。
 
「ホント、お前は解りやすいな。っていうか、親友を疑うなよ」
「気を悪くしたらごめん」
「妄想探偵の推理に気を悪くするほど器は小さくねえよ。気にすんな」
「妄想探偵」
 
 今度は菜留が渋い顔になる。
 
「学校が休みになるのは嬉しいけどさ。こんなことまでしないって」
「司、変なことを聞いていいかな?」
「なんだよ。改まって、俺の好みのタイプでも聞きたいのか?」
「三年前のことなんだけど」
 
 途端に司の表情が強張った。それでも菜留は続ける。
 
「司は亡くなった永原 千博さんと知り合いだったんだよね?」
「志穂に聞いたのか?」
 
 普段の飄々とした口調ではない、ぐっと圧力の増した声だった。
 
「違うよ。千博さんのお兄さんと話したんだ。その、校舎の見回り中に」
「そうか、秀直さんが来てたのか」
「司と秀直さんは、兄弟みたいに遊んでたって聞いたから」
「昔はな」
 
 シンプルにひと言だけ告げて、黙り込んだ。
 
 数秒か数分にすら感じてしまう居心地の悪い空気が漂う。
 
 どう話を進めるべきか懸命に考える菜留。
 だが、思考が回答に辿り着くよりも早く、司が口を開いた。
 
「ダメだな。こういうのって、キャラに合わないわ」
 
 そう言って、大袈裟に声を上げて笑った。
 
「知り合ったのは絵画教室だったんだ。小学校の低学年の頃、通っててな」
「それは初めて聞くよ」
「菜留と会った頃には止めてたからな。実際な、そこそこ評価が良かったんだぞ。市のコンクールで賞を貰ったくらいだからな」
「知らなかった。なんか想像できないよ」
「意外だろ?」
 
 少し気持ち軽くなったのか、会話が進む。
 
「秀直さん達も通ってたんだ。ホントに秀直さんは凄くてな。全国のレベルのコンクールでも三年連続で受賞したりして、天才画家のタマゴって言われてたんだ。俺にもあれくらいの才能があればな。もっと絵も続けてたんだけど」
「そんなに凄かったんだ」
「そりゃもうな。レベルが違うよ。ウチの淀橋だって、秀直さんに比べたら全然さ」
「僕は絵が全然ダメだからね」
「不思議だよな。お前くらいの妄想力があれば、なんか凄い絵が描けそうなのに」
「妄想で描くわけじゃないから」
 
 自分イコール妄想の公式が出来上がりつつある現実に、嘆息してしまう。
 
「千博さんともそこで知り合って、友人になったんだね?」
「千博さんな」
 
 噛み締めるように、少し間を開けた。
 
「いっか。お前だしな。千博さん、ちぃ姉は俺の初恋の人なんだよ」
「え?」
「可愛い人だったんだよ。性格もさ、真面目で厳しいとこもあったけど。優しくてさ。もうな、正直惚れ込んでた。ちぃ姉が藤見野合格した時にさ、告白までしたんだぞ」
「その頃って、僕ら中学だったよね」
「おいおい。愛に歳は関係ないんだぜ」
「そりゃそうかもだけど」
 
 当時の自分を振り返ると、想像すらできない世界だった。
 
「結果は玉砕だったけどな。ただ三年後、藤見野に入れたら付き合ってもいいよって言ってくれたんだ。当時の俺は成績悪かったし、諦めると思ったんだろうな。でも、俺は真に受けて頑張ったわけだ。今思うと、超恥ずかしい話だよ」
「それは違うんじゃないかな」
 
 菜留がやんわりと否定する。
 
「きっと、待っててくれたんじゃないかな。そういう人なんだよね」
 
 司には答えられなかった。
 ただ照れ臭そうに視線を外すのが精一杯だった。
 
 らしくない司の仕草に心苦しさを感じつつも、菜留は本題に入るべく姿勢を正す。
 それを見て司も座りなおした。
 
「司、僕は今から凄く酷い質問をすると思う。それも僕の中にある疑問を解く鍵のひとつを見つけるためだけに」
「ここしばらく続いてる脅迫件に関ることなんだよな。姫堂先輩に頼まれたのか?」
 
 司の話に菜留は小さく首を振った。
 
「お前の意思なら答えるしかないか。で、なんだ?」
「三年前、千博さんがなくなったことについてだけど。当時の記録を見ると、運転手の過失を一部認める程度に留まってたよね。千博さんが乗っていた自転車が無灯火だった点を鑑みての決着だったと思うけど」
 
 ここで小さく息を吐いた。
 特に司の反応がないのを確認して先に進める。
 
「あの決着で司は納得できたのかな?」
「なかなか意地の悪い聞き方するよな。お前じゃなかったら、怒ってるところだ」
「ごめん」
「いいさ。お前って人間は解ってるつもりだからな。えっと、あの事故の決着な。実際さ、納得できるはずなんてないだろ。運転手に対する罪が軽いって言うんじゃないぞ。それは裁判で決まったことだし。出会い頭だったみたいだし。故意じゃないんだし」
「じゃあ、何が不満なの?」
「ちぃ姉の乗ってた自転車な、学校の備品だったんだよ。整備が行き届いてなくて、電気が点かなかったんだって。言えば学校の過失による所が大きいよな。でも、その点について特に誰かが責任を負った訳じゃないんだよ。嫌な言い方だけど、不運だった、で終わりさ。ちぃ姉の家には校長から直接謝罪があったって言うけどな」
「校長先生が自ら?」
「秀直さんに聞いたんだけど、そこで約束したんだって。こんな事故が二度と起こらないように新歓祭は行わないって」
「それで今年までなかったんだね」
「でも再開を望む生徒も多いらしくてさ。順当に行けば、ちぃ姉も去年卒業したはずだからって理由で、校長も再開を決めたそうだ」
「そうなんだ。でも、今の生徒にとっては仕方ないかも知れないね」
「そういうのも解るけどな。俺としては、どうにも納得できないんだよな。みんなしてちぃ姉のことを忘れようとしてるみたいでさ。特に許せないのは当時の教師だった連中だよ。全員、校庭に並べてぶん殴ってやりたいところだぜ」

 ぐっと拳を握って告げた。
 しかし、発言の過激さに気付いたのだろう。
 
「あ、でも秋野先生は例外だぞ。当時は教師じゃなかったし。そもそもあんな美人に手を上げたら死刑になっちまうよ」
 
 そんな冗談を付け加えた。
 
「そう言えばウマ研の顧問って秋野先生なんだよな。いいよな、綺麗な先生が顧問でさ」
「でも、あまり話す機会はないよ」
 
 話を合わせてみるが重い話の後ではイマイチ乗り切れない。
 そんな菜留の頭を、司が軽くこつく。
 
「お前にとっちゃ秋野先生なんかどうでもいいんだろうな。姫堂先輩さえいてくれれば、満足って感じなんだろ?」
「そ、そんなことないよ。確かに姫先輩は素敵な人だけど」
「そう言えばお前さ、姫先輩って呼ぶよな。なんだなんだ。いつの間にか距離を縮めたのか?」
「そんなんじゃないってば」
「お前ってホントに嘘つけない人間だな。お前の話も終わったみたいだし。こっからは俺のターンだ。覚悟しろよ」
 
 慌てる菜留に司が人の悪い笑みを浮かべた。
 
 

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