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日常をまったり紡ぐ近未来的日記..紅子の世界全壊です!       週末はオリジナルラノベの更新もしています


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紅子 縁璃

Author:紅子 縁璃
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恋するメドゥサ -17-
恋するメドゥサ -17-
 
 
 ■五月三日(水)

 世の中には色々と理不尽な事がある。それらに対し不満を漏らすより、どう対処していくべきかが大切だ。
 司は高校二年生にて、妙に達観した気分になっていた。
 
「ちょっと、聞いてるの?」
「あぁ、聞いてるよ」
 
 理不尽の元凶である志穂の声は苛々に満ちている。
 
「高三にもなって女児向けのアニメなんか観に行こうとか思う? そこまでして菜留にちょっかい出したいっていうの?」
「いいだろ、別にさ」
「菜留も菜留よ。あんな嬉しそうな顔しちゃってさ。もう、腹立つわね」
 
 視線の先、藤見野駅の改札前に立っているのは菜留だ。
 
 普段の制服姿と違い、カジュアルなアイボリーのシャツに薄手のカーディガン。ボトムスはシンプルなデニム。
 携帯を気にしつつも、周囲をきょろきょろと落ち着かない様子だ。
 
「嬉しそうっていうより、怯えている小動物って感じだけどな」
 
 司はカーキーのチノパンにスプリングジャケット。キャップを被り、色つきの眼鏡を掛けている。
 一方の志穂はカットソーとハーフパンツ。足元はスニーカーと動きやすさを重視した格好だ。
 
「なあ、志穂。こんなの止めようぜ」
 
 菜留から志穂に電話があったのは昨夜、なんとなくドラマを見ている時だった。
 浮かれた声で沙々子が誘いを受けてくれた事を告げられた。
 
 志穂にとっては予想外の展開。
 クールで無愛想な沙々子が子供向けのアニメ映画なんて、絶対に有り得ない。そう読んでのアドバイス。
 上手く行けば、菜留の趣味を誤解し、距離を開けるんじゃないかとまで思っていたのに。
 
 動揺を隠して電話を切った後。すぐ司に連絡した。用件はもちろん。
 
「人様のデートを付け回すなんて、どう考えても悪趣味だって」
「なによ。司は菜留が心配じゃないわけ?」
 
 二人は改札口から少し離れた場所。旅行代理店の看板の陰に潜んでいた。
 
「ただ映画観に行くだけだろ。何をどう心配するって言うんだ?」
「万が一のことが起こったらどうすんのよ」
「万が一ってどんなことだよ?」
 
 問われた志穂が何を妄想したのか、頬を微かに赤らめた。
 
「べ、別にどんなことでもいいでしょ。そんな風になったら、アンタが責任取ってくれるっての?」
 
 無茶苦茶な発言だが、怒れる乙女に正論では勝てない。
 結局、司はやれやれとばかりに口を閉じた。
 
「あ、どうやら来たみたいよ」
 
 あちこちを見回していた菜留の動きが止まったのだ。
 
「どれどれ。へぇ、いい感じじゃないか」
 
 沙々子の格好はキャメルのスプリングコートと焦茶の膝下のスカート。
 靴はココアブラウンのブーツで、頭には丸っこい帽子を被りクセ毛を隠していた。
 茶系統のグラデーションで統一されたクラシックな雰囲気だが、胸元から見える白いシャツが清楚さも感じさせる。
 
「こうやって見ると、姫堂先輩ってかなり美人だよな。スタイルもいいし。痛っ!」
 
 力一杯足を踏まれ、司が思わず蹲る。
 
「なによ。めかしこんでさ。いやらしい」
 
 あくまで普段着と言った自分の格好が悔しい。
 楽しそうに話している二人を見ていると、惨めにすらなってくる。
 
「比べるなって。あっちはデートで、こっちは覗きなんだから」
「うっさいわね。解ってるわよ。私だって、ちゃんとお化粧してお洒落すれば、全然負けないんだから」
 
 一方的なリベンジを心に決める。
 
「ただ惜しいのはスカートか。俺的にはもうちょっと丈が短い方が好みなんだよな」
「だよね。私も短めなのをプッシュしたんだけどさ。腿ちょい下って感じの」
「あぁ、それいいっすね」
「でしょ。折麗な足してんのに勿体無いじゃん。でも、凄く恥ずかしがっちゃってさ。嫁入り前の女がそんな格好できるかって騒いで」
「はは、そりゃまた古風な」
「呆れるくらい古風でね。で、結局、落ち着いた感じでまとめましたってわけ」
「いや、でもいいっすよ。大人って雰囲気で……」
 
 なんとなく交わしていた会話に違和感を覚えて振り返った。
 
 そこに立っていたのは見知らぬ少女だった。
 ボーダーのティシャツにサスペンダー付きのショートパンツ。足元はサンダルで、手にはシンプルなミニバック。
 ボリュームのある髪を首の後ろでまとめている。
 
「あの、誰です?」
 
 唖然とする司に代わって、志穂が尋ねる。
 
「あ、ごめん。いきなり話に混ざっちゃって。私は姫堂 沙々子の悪友で、高井田 智っての」
 
 初対面とは思えないフランクな挨拶に、「はあ、どうも」と曖昧な返事をしてしまう。
 
「とりあえず今日はよろしく」
「よろしくって、なんですか?」
 
 沙々子の友人という肩書きに、つい警戒して声が強張る。
 
「だって、二人のデートを覗き見すんでしょ」
「わ、私達は別にそんなこと」
「いいのいいの。誤魔化さなくて。私もそのつもりで来たんだから。っていうかさ、こういうイベントは楽しんでナンボでしょ」
 
 にひひと笑う智に、志穂と司は思わず顔を見合わせてしまう。
 
「おっと、移動するみたいだよ。ほらほら、早くしないと見失っちゃうよ」
 
 嬉々として追跡を開始する智。二人は仕方なく、その後に続いた。
 
  
                       * * *
 
 
 藤見野はメインステーションを中心とした典型的なベッドタウン。
 数年前の再開発を契機に、田舎然とした雰囲気が急速に変わりつつある。
 駅前にあるショッピングモールは、その象徴。地上十階地下三階に及ぶ巨大な物だ。
 
 ショッピングモールの七から九、三フロアが映画館となっている。
 各階に三つずつ、全部で九つのスクリーンがある。
 
 カウンターでチケットを購入し、菜留と沙々子は席についた。
 ゴールデンウィークという事もあり、全席指定の席は七割方が埋まっている。
 その殆どが子供と保護者という組み合わせだ。
 
 後ろに近い座席についた菜留がチラリと時計を確認。
 上映時間の十三時半には、十分ほどの余裕があった。
 
「やはりと言うべきか。子供が多いな」
 
 隣に腰を下ろした沙々子がジュースのカップを渡しながら感想を述べる。
 
「ありがとうございます。子供向けのアニメですからね。あの、姫先輩」
「ん、なんだ?」
 
 ジュースと共に買ったスナック菓子を口に運びながら答える。
 チケット代は菜留が出したので、これらは沙々子の奢りになった。
 
「こういう子供向きのって嫌じゃなかったですか?」
「そんなことはない。童心に帰るのも悪くないものだ」
 
 柔らかい笑みを浮かべる。
 
「と言えば気取った風になるが、実のところ、純粋に楽しもうと思っている」
「ありがとうございます。嘘でもそう言ってくれると嬉しいです」
「嘘ではない。本心からの言葉だ。何しろ昨夜は、楽しみで寝付けなかったくらいだ」
 
 思わず漏らしてしまった言葉に気付いた。一瞬にして顔が真っ赤になる。
 
「いや、違う、違うぞ。映画。そう、映画が楽しみで寝付けなかったという意味だ。もちろん、君と出かけるのも楽しみでなかったわけではない。だが、つまり……」
 
 焦る沙々子に救いの手が差し伸べられた。館内の明かりが消えたのだ。
 
 静かにスクリーンの幕が上がる。
 大きな音と共に上映前の予告が始まった。
 
「とりあえず今は映画だ」
「そうですね」
 
 答えつつも、いつもと違う可愛い沙々子が見られた事に表情が緩む。
 
「なんだ、その顔は?」
 
 尖った一言に続いて、ほっそりとした指が菜留の頬を軽くつねる。
 それは摘んだという程度の優しい感触だった。
 
 じゃれ合う二人から離れた前列近く。
 司は始まりを待ち切れずそわそわと身体を揺する子供達と、そんな我が子を嗜める保護者達に囲まれていた。
 
「ここ、全席指定じゃんかよ」
 
 思わず愚痴が漏れた。
 
 当初の予定では映画が終わるまで、志穂と司は外で待機予定だった。
 上映時間中に買い物でも行こうと思っていたくらいである。
 
 しかし、絶妙の暗闇だの。不意に触れ合う手と手だの。互いに通じる想いと体温だの。
 智に怪しい単語で煽られた志穂は、中で二人を見張るように命じたのだ。
 
 怒れる乙女は理屈で止められない。司に選択権なんてあるはずがない。
 
「この歳になって、こんな映画を観ることになるなんてな」
 
 はぁっと大きく溜息をこぼした。
 
 
                       * * *
 
 
「強大な敵に何度倒されても、その度に立ち上がる勇気。共に戦う仲間達との友情。どんな苦境でも諦めない心。実に素晴らしい作品だった」
 
 映画が終わり、地下一階の喫茶店に入っても、沙々子は興奮冷めやらぬといった様子。
 胸元にパンフレットを抱き、頬を高潮させて語っている。
 
「子供向けということで、主題がストレートに描かれているところがいい。話の中盤、行き違いからバラバラになった仲間達が、絶体絶命のピンチに駆けつけてきた時には胸が熱くなったぞ。それだけじゃない。ラストシーンも最高だ」
 
 そんな二人が座る窓際から、数席店内奥に離れたテーブルでは。
 
「ホントにいい映画だったんだって。ガキ向けってだからって侮れないよ。メッセージもしっかり織り込まれているし。確かに展開はパターンだと言えばそうさ。でもな、それが良いんだよ。なんていうかな、浪漫ってのがあるんだよ」
「そんなのはどうでもいいの」
 
 いつもより雄弁に語る司に、志穂は苛々を募らせる。
 
「高井田先輩には解りますよね。浪漫っての」
「解る。解るよん。やっぱ世界の半分くらいは浪漫で出来てるからね」
 
 智はと言えば、ご機嫌で相槌を打つ。
 
「特にラストがいいんだよ。ライバルキャラが最後に……」
「だから、そんなのはどうでもいいのよ!」
 
 ついに限界を越えた志穂が声を荒げた。司が続きを飲み込む。
 
「映画の話なんかどうでもいいの。あの二人よ。変なことしてなかったでしょうね」
「知るかよ。席も離れてたし」
「ちょっとアンタ、ふざけてんの!」
 
 

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