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日常をまったり紡ぐ近未来的日記..紅子の世界全壊です!       週末はオリジナルラノベの更新もしています


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紅子 縁璃

Author:紅子 縁璃
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恋するメドゥサ -15-
恋するメドゥサ -15-
 
 
【4】
 
 ■五月一日(火)
 
 駅から学校に続く通学路。
 登校ラッシュの時間帯である今は、電車組と徒歩組の生徒達が交わり大きな列となり続いていく。
 
 今日はゴールデンウイークの谷間にあたる火曜日。
 登校する藤見野の生徒達の気だるい様子が見て取れた。
 
 遠慮がちな欠伸を左手で隠しながら、志穂も足早に歩を進める。
 
 先週の復習テスト。結果は自己最高の五十三位。
 にもかかわらず、その心はじんわりと重たい。
 
 志穂にとって今回のテストは大勝負だった。
 いつも以上の時間と労力を注ぎ込み、できる限りの手を打った。
 廊下に張り出された結果を見た瞬間、思わずガッツポーズをしたくらいだ。
 約束された圧勝に、意気揚々と三年の東校舎に向かった。
 
 沙々子の成績は事前に陸上部の先輩達に確認済み。
 下から数えた方が早いという劣等生ぶりだ。
 沙々子との差を見れば、菜留も目を覚ますに違いない。
 
 そんな志穂を待っていたのは余りに残酷な現実だった。
 
 沙々子の成績は堂々の二十九番。
 
 採点ミスでなければカンニングをしたんだ。以前の自分なら、そう決め付けたに違いない。
 だが、沙々子がそんな人間じゃない事を知っている。
 本気で勝負した相手だからこそ直感で解る。
 つまり、自分はまた負けた。二度目の完敗だ。
 
 同じく自己最高をマークした菜留より上だったのが、せめてもの救いだった。
 
「短距離だったら絶対負けないのに」
 
 つい漏らしてしまう。
 得意とする二百メートルなら、三年の先輩に勝てる時だってあるのだ。
 
「ダメだな。どんどん卑屈になってる気がする」
 
 小さく頭を振って、バカバカしい考えを吹き飛ばした。
 よしっと前を向いた所で、細く頼りない背中が見えた。
 
 考えるより早く駆け出していた。
 生徒達の流れをするするとすり抜け、瞬く間に距離を詰める。
 
「おっはよ」
「あ、おはよう。志穂」
 
 振り向いて微笑む菜留の隣に並んだ。
 
「珍しいじゃん。菜留、いつも遅刻ギリギリなのに」
「寝る前に本読むのを控えてるんだ。遅刻は良くないって姫先輩に注意されたしね」
「ふうん」
 
 菜留の口から沙々子の話が出ると、どうしても不愉快さを滲ませてしまう。
 
「私だって小学校の頃から言ってたのに」
「そうだよね。でも、本が楽しくってさ」
 
 何度も聞いてきた菜留の言い訳に、志穂が頬を膨らませる。
「私よりも本の方が好きだってのね!」とか「私の忠告は無視するくせに、姫堂先輩だと素直に従うのね!」といった感情的な反応を、ぐっと堪えた。
 
「志穂、テストの成績凄かったね。今回は勝てると思ったんだけど」
「冗談でしょ。菜留が私に勝とうなんて、百年は早いんじゃない?」
 
 ふふんと偉そうに、少年のような胸を張る。
 
「それは酷い言い方だね」
「現実ってのは残酷な物なのよ。ところで、なんの雑誌買ったの?」
 
 手に持ったコンビニ袋に気付いて尋ねた。
 
「エンタメ関連の情報誌だよ」
 
 袋から取り出して開いた。
 ゴールデンウイークをターゲットにした映画の特集頁を見せる。
 
「志穂、観たい映画ってある?」
「え?」
 
 志穂の心臓が跳ねた。

「そんなの急に言われても。服とかも準備しないとダメだし。髪だって切っときたいし」
 
 前髪をこちょこちょと弄りながら、消え入りそうな声で答えた。
 
 そんな志穂の言葉は届かなかったのだろう。菜留が続ける。
 
「今回のテストは姫先輩のお陰で頑張れたから。お礼に映画でも誘ってみようかなって」
「……ふうん」
 
 志穂の声から温度が消えた。
 
「でもさ、女の子がどんな映画を好むのか解らなくてさ。志穂なら、どんな映画を誘われたら嬉しいかなって」
「そう、なんだ」
「ひょっとして怒ってる? 僕、変なこと聞いたかな?」
 
 湧き上がる怒りにコメカミを震わせながらも、志穂がぎこちない笑みを作る。
 
「ううん、全然。変だな。怒ってるように見える?」
「怒らせちゃったなら、ごめん。僕さ、親しい女の子いなくて。こういうのを聞ける相手って志穂しかいないから」
「怒ってないってば。むしろ、私に相談してくれて嬉しいって思っただけ。ほら、私は菜留の保護者だしね」
「でも」
「本貸して。私がチョイスしてあげるから」
 
 半ば引っ手繰るように本を奪う。
 
「どれがいいかな。そうだな。あ、これがいいよ。絶対にこれ」
 
 志穂が指し示したタイトルに、菜留が露骨に眉を潜ませる。
 
「本気で言ってる?」
「菜留って、全然解ってないね。女の子ってのはさ、いつまでもヒロインに憧れてるもんなの。そういう乙女心が解ってくれないと、なんかガッカリって感じしちゃうな」
「でも、姫先輩は年上だし」
「ほらそこなのよ。そういう見方されると、女の子は傷付くもんなの。誘ってみてたら解るよ。絶対に喜んでくれるからさ」
「そうなのかな」
「そうなんだって。それとも私の言うことが信じられない?」
「いや、そういう訳じゃないけど」
「じゃあ、それで決まり! 一件落着!」
 
 ぱちぱちと手を叩く志穂に、押し切られて頷いてしまう。
 
 そんな二人の数歩後ろ。
 偶然やり取りを聞いていた司は大きく溜息をついた。
 
「志穂に聞く菜留も酷いが、あんなのを勧める志穂も志穂だな。俺としては菜留を助けてやりたいが、心情的には志穂を応援してやりたいし」
 
 しばし思考を巡らせた後、誰もが納得する結論に辿り着いた。
 
「とりあえず、聞かなかったことにするか。そもそも恋愛ってのは部外者が口を挟むもんでもないしな」
 
 
                       * * *
 
 
 藤見野駅から郊外に駅六つ。
 約三十分乗り進めば、私立幸泉学院の最寄り駅、幸泉学院前に着く。
 駅前はやや古風な商店街と小ぶりなショッピングモールがあり、落ち着いた雰囲気と若者らしい慌しさが混じり合った奇妙な印象を与える。
 
 下校時刻を少し過ぎた午後十七時。
 智は駅隣のハンバーガーチェーンに入った。
「いらっしゃいませ」の声とプライスレスの笑顔に出迎えられる。
 普段ならカウンターでポテトとジュースを注文するところだが、今日は待ち合わせ。
 階段で二階席に向かった。
 
 店内は智と同じ、紺地にグリーンのラインをあしらった古風なデザインのセーラーで溢れていた。
 混み具合は七割強と言ったところ。
 
 智は店内に視線を走らせ、窓際の席に濃緑のブレザー、藤見野の制服を見つけた。
 
「ヒメボン、お待たせ」
 
 ひと声掛けて、対面の席に腰を下ろす。
 
 沙々子が読み進めていたハードカバーを閉じて顔を上げた。
 あちこちがカールしかクセの強い髪と、異常なまでの威圧感を放つ瞳は健在だ。
 
「急に呼び出して迷惑ではなかったか」
「ううん。私も暇してたしね。それに奢りとあれば、即参上ってのがモットーだし」
 
 沙々子からメールが入ったのは、今日の放課後だった。
 内容はとても簡素。待ち合わせの場所と時間が書いてあっただけ。
 件名に「テストのお礼に食事を奢ろう」と書かれていなければリアクションに困ったところだ。
 
「で、ヒメボン、どうだったの?」
「うむ。良い成績を修めることができた。感謝している」
「いや、そっちじゃなくてね」
「高井田、そのヒメボンという呼称は止めてくれないか」
「なんで? 気に入っているんでしょ」
「君の記憶力がどれほど乏しいか解らないが、常に不満を訴えているつもりなのだが?」
「あれ? そうだっけ? じゃあ、ササネリウスの方がいい?」
 
 智の言葉に沙々子は大きな溜息を返した。
 
「ところで、ヒメボンさ」
 
 お約束の問答は終了と言う事で、次の話題に移る。
 
「このハンバーガーとポテトの山は何かな?」
 
 二人の前。トレイに積んであるのはハンバーガーの包み紙とポテトが、それぞれ五つ。
 ハンバーガーは最近復刻されたチキンのフライを挟んだ物。ポテトは値段的にお得なLサイズだ。
 更にはジュースの入った紙コップも五つ。
 沙々子の近くにストローの刺さったコップがひとつある。
 
「用件に書いておいたつもりだが」
 
 やれやれと言った風に沙々子が告げる。
 
「テスト勉強を見てくれたお礼だ」
「やっぱり。実のところさ、そうじゃないかなとは思ったんだよね」
「さあ、遠慮はいらないぞ。どんどん食べてくれ」
「ちょっと待って」
 
 微笑を添えて勧める沙々子に、大きく広げた手を突きつける。
 
「その前に確認したいところがあるんだけど。このチョイスはなに?」
「以前、君が言っていただろう。このチェーン店のチキンバーガーが美味しいと。だから気を利かせて注文しておいてやった」
「同じのを五つも?」
「ふむ。心配ない。君なら大丈夫だ」
「しかもセットで?」
「店員が勧めてくれたのでな」
「まあ、奢ってくれるわけだし。文句言ったらアレだけどさ。二人でこの量はかなりキツイと思わない?」
 
 尋ねる智に沙々子が小さく首を傾げる。
 
「なに、その反応。私、変なこと言った?」
「私は食べないぞ。鶏肉は苦手だからな」
「は?」
「フライドポテトはカロリーを考えると食べられない」
「へ?」
「容姿にこだわるタイプではないと思うのだが、それでも……。いや、なんでもない」
 
 そう言って、立ち上がった。
 
「だが、このシェイクというのは美味しかった。もうひとつ注文しようと思っている。他に欲しい物はあるか? 今日は私の奢りだ。遠慮はいらないぞ」

 

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