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日常をまったり紡ぐ近未来的日記..紅子の世界全壊です!       週末はオリジナルラノベの更新もしています


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紅子 縁璃

Author:紅子 縁璃
座右の銘は常に笑顔!
極度の飽き性で移り気..
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恋するメドゥサ -14-
恋するメドゥサ -14-
 
 
 伝説の妖女を思わせる鋭い視線。
 思わず下がりそうになるのを堪え、殊更明るい声で尋ねる。
 
「アタシが嘘をついているって? 冗談止めてよ。そもそもさ、なんでアタシが嘘をつかないといけないのよん」
「人が嘘をつく理由は限られる。自分にとって不都合な現実を隠すためだ。つまり君は、私に知られたくない真実を持っていることになる」
「あのね、アタシがどんな嘘をついたってのさ」
「爆発が起こった時、君は美術室にいなかったじゃないか」
 
 沙々子の指摘を受けて、真希乃の喉がごくりと鳴った。
 
「姫先輩、それってどういうことなんです? 美術室にいなかったってどうして解るんです?」
「簡単だ。君が野次馬から抜け出して向かったのは北校舎だった。もし、絵を描いている途中で外に出たなら、戻るのは美術室のはずだ」
 
 その説明に菜留も、ようやくにして合点がいった。
 
 一方の真希乃はぎりっと奥歯を噛み締める。
 普段の明るい彼女とは掛け離れた敵意が、じんわりと表情に滲んだ。
 
 緊張感が漂う。じっとりと粘度のある空気だ。
 
 その沈黙を破って、真希乃がふうっと息をついた。
 
「流石は姫堂の千里眼だよ。下手な嘘は簡単に見抜かれちゃうね」
 
 ぎこちない笑みを作って、大袈裟に頭を掻いた。
 
「姫堂先輩の言う通り。アタシさ、美術室にはいなかったんだ。ホントはね」
 
 視線を菜留の方に移動させる。
 
「菜留っちの後をつけてたの。テスト結果を見てさ、いきなり三年の校舎に走り出したでしょ。ひょっとして、面白イベントが見られるんじゃないかって思ってさ」
「イベント?」
「もち! 愛の告白イベントだよ! どっぎゅぅぅぅん!」
 
 動揺する菜留に、真希乃が指を突きつけた。
 
「こ、こく……だ……と」
 
 首まで真っ赤になって絶句する沙々子。
 
「そ、そんなのするわけないだろ!」
 
 菜留が慌てて声を上げた。
 
 その反応に沙々子が、がっくりとうな垂れる。
 
「あはは。そんなに照れなくてもいいじゃん。菜留っち」
「照れてなんかいないよ!」
「あはは。怒んないの。冗談だって。じゃあ、まったね」
 
 愛想良く手を振ると、スキップ交じりの駆け足で離れていく。
 
 不恰好な走法を見送りながら、菜留は大きく溜息をこぼした。と、沙々子の方に顔を向ける。
 俯いて固まっている沙々子に、「あの、姫先輩」と声を掛けた。
 
 沙々子がはっと我に返った。
 
「む。淀橋は?」
「もう行っちゃいました」
「そう、か。この私がしてやられるとはな」
 
 悔しげに呟く。
 
「姫先輩、今回の爆発なんですけど」
「菜留くん、今日は怪我人も出なかった。窓ガラスが幾らか割れたようだが、イタズラで済む範囲と言えなくもない。これ以上の追求は止めるべきだな」
 
 言いつつも、沙々子には無念さが見て取れた。
 
「そうですね。ところで姫先輩、テストも終わったことですし、何か甘い物でも食べにいきませんか?」
 
 強引だと思いつつも、軽い口調で話題を変えた。
 
 一瞬、当惑を浮かべた沙々子だったが、直ぐに笑顔に変わる。
 
「悪くない提案だ。駅前に美味しいタルトの店がある」
「あ、いいですね」
「私もタルト大好物なんですよ。ご一緒してもいいですか?」
 
 割り込んできたのは志穂だった。
 ジャージ姿で、少し息が跳ねている。
 
「駒中くん、部活中ではないのか?」
「ご心配なく、今日は軽いランニングだけであがるつもりでしたから」
「でも、志穂……」
「なによ、菜留は私が一緒だと嫌だって言うの?」
「別にそういうわけじゃないけど」
「甘い物は大勢で食べた方が美味しい。帰り支度を整えて、校門で集合しよう」
 
 沙々子の提案に異を唱える者はなかった。
 
 
                       * * *
 
 
 藤見野市のメインステーション、藤見野駅から電車で約一時間。
 喧騒が薄れた郊外に幸泉路(こうせんみち)駅がある。
 更に駅からバスで三十分。
 ゆったりとした山道を登った所にある霊園は、近隣で最大規模の物になる。
  
 一定の間隔を開けて並ぶ無機質な石達。
 それぞれ微妙にデザインは異なっているが、小さな差は大多数の中に埋没し印象は薄れてしまう。
 
 霊園の隅、平凡な四角柱のお墓の前。合掌を解いて、司が弱々しく微笑む。
 
「ちぃ姉、とうとう俺の方が年上になっちまったよ。一年で二十センチ近く身長も伸びたんだ。もう、弟みたいなんて言えねえだろ。ぶっちゃけさ、俺ってかなりイケてる方なんだぜ。今年に入って、三人に告白されたんだ。はは、びっくりしたろ。ちぃ姉はホントに見る目がないよな。こんなにいい男をあっさり振っちまうんだから。まあ、三年前の俺は今よりずっとガキだった。っていうか、中坊だったからな」
 
 足元に置いた箱を開けた。
 甘いフルーツの香りが漂う。中に入っていたのはロールケーキだった。
 手際良くナイフで切り分けて供える。
 
「ちぃ姉、大好きだったろ。俺が焼いたんだ。部活で鍛えてるからな。もう料理だって、ちぃ姉に負けないさ。テニスの方は、まあ片手間だから、まだ勝てないかもだけど。来年には追いついてみせるよ。俺には時間があるんだしな」
 
 ふうっ大きく息をついて、目元を押さえる。
 
「ここに来るとさ。ちぃ姉がひょっこり現れるんじゃないかとか思っちゃんだよ。生き返っちゃったとか言って。はは、最近、変な妄想するようになっちまった。親友の妄想好きに影響されてるのかな。昔話したろ、菜留って変な奴がいるって。ちぃ姉にも会わせてやりたかったよ。そうそう、その菜留が初恋に目覚めたんだ。でさ、志穂って覚えてるか。何回か会ったよな。あいつの片想いが危機的状況なんだよ。お陰で当たられてたまんないぜ。俺的には志穂を応援してやりたいんだけど、菜留の気持ちもあるしさ」
 
 墓石に向かって、他愛ない近況報告を続ける。
 気がつけば時間が経ち、周囲が柔らかな夕日に包まれていた。
 
「さて、今日はそろそろ帰るよ。あ、そうだ。言い忘れてた」
 
 司の表情が曇る。
 
「新歓祭再開するんだってさ。ちぃ姉が生きてたら、卒業してるはずだって話でさ。五月末に時期をずらすらしいんだけど。なんかさ、ちぃ姉を忘れようとしてるみたいでな。正直、気に食わないよ。死んだ人間の事を、いつまでも引きずるのはどうかってのも解るけど。俺としては、そう割り切れないんだ。はぁ、最後につまんない話しちゃったな。今度は、ちぃ姉が大好きだった鯖の味噌煮でも……」
 
 不意にポケットの携帯が震えた。
 ディスプレイ表示された名前に、うんざり顔になってしまう。
 
「何かあったのか? こっち? こっちは墓参りだよ。墓参り。で、用件は? え? 姫堂先輩と菜留が? 言ってるだろ姫堂先輩には……。は? 不可抗力? なんだよ、それ。意味解んないんだけどさ。解った解った。後で聞いてやるから」
 
 携帯を切りポケットに戻したところで、近付いてくる足音に気付いた。
 
 黒いスーツの青年だった。献花用の花束を手にしている。
 
「やあ、司くん。元気そうだね」
「ご無沙汰っす」
 
 表情を緩める青年に、司は会釈で応えた。
 
「秀直(ひでなお)さん、今日は非番すか?」
「早めにあがらせてもらったんだ。それにしても司くん、随分と大きくなったな。百八十はあるか。来年は追い抜かれるかもな」
 
 親しげに続ける。
 
 彼、永原 秀直(ながはら ひでなお)は警察官。
 司より数センチ高いだけだが、鍛え上げられた分厚い身体のせいか、ひと回りは大きく感じられる。
 短く切り揃えた黒髪に、引き締まった顔立ち。
 なかなかの好青年といった風情だ。
 
「どうだ。将来は警官になってみないか?」
「あはは。そういう責任感が必要な仕事はちょっと」
「そんなことを言うなよ。最近は美人の婦警さんも増えたんだぞ」
「え、そうなんっすか。それなら……」
「こらこら。そういう不純な動機で決めるんじゃない」
 
 他愛ない冗談で笑い合う。
 
「それにしても」
 
 秀直が小さく息をついて、墓石の方に顔を移す。
 
「千博(ちひろ)が死んで三年か。生きてたら大学生だったんだな」
「そうっすね。きっと素敵な女子大生になっていたでしょう」
「まあ、僕に似て美人だったからな」
「ホント、似てなくて良かったと思います」
 
 もう一度、笑い声が上がった。
 
「しかし、司くんも変わってるな。命日は明日だというのに」
「みんなと一緒じゃ、ゆっくり話せませんからね。それは秀直さんも同じじゃないんすか?」
 
 秀直からの返答はなかった。
 司はそれを同意と受け取る。
 
「兄妹の邪魔してもあれですし、そろそろ失礼します」
「あぁ。またな」
 
 最後に一礼して離れていく司を、「ちょっと待ってくれ」と呼び止めた。
 
「今日、君の学校で爆破事件があったのを知っているか? 放課後だったんだが」
「爆破事件?」
 
 思わず声が裏返る。
 
「大袈裟な物じゃない。怪我人も出てない。窓ガラスが割れた程度だ。だが、イタズラにしては悪質過ぎる。噂レベルでいいが、何か聞いていたらと思ったんだが」
「すんません。今日は急いで帰ったもんで」
「そうか」
「俺、新聞部ですし。色んな部活に入ってますから、ちょっと聞いてみます」
「どんな些細なことでもいい。解ったら教えてくれ。僕の携帯は知ってるな」
「秀直さんに直接ですか?」
 
 尋ねる司に、秀直は真面目な表情で答える。
 
「僕にとって藤見野は特別なんだ。妹が通っていた学校だからな。犯人が何を考えているか解らんが、僕の手でなんとかしたい。はは、これじゃ警官失格かもな」
「いえ、その気持ち解るっすよ。何か解ったら、直ぐに知らせますんで」
「そう言えば、藤見野には姫堂の孫娘が通っているんだよな」
「学校では有名ですよ。俺の友達が親しいんっすけど、なかなか鋭い感覚を持ってるらしいっす。まるで小説の探偵みたいだって」
「そうなのか」
 
 やや考え込む風になった秀直に、司は怪訝な顔になる。
 
「要人の孫娘だからな。もし機会があれば、変なトラブルに首を突っ込まないよう伝えてくれないか」
「そういうことっすか」
「警察はそういうことも考える組織なんだよ」
「解りました。友人づてですけど伝えてみます」
「つまらないことを頼んですまないな。おっと」
 
 内ポケットに手を入れて携帯を出した。ぶぶぶっと震えている。
 
「やれやれ。後を頼んでおいた奴からだ。まったく、全然頼りなくて困るよ」
「それを導いていくのも秀直さんの仕事なんすよね」
「おいおい。痛いところを衝くなよ」
 
 司の言葉に苦笑する。
 
「呼び止めて悪かったな。何か解ったら知らせてくれ」
「はい。じゃあ」
 
 踵を返して離れていく司の背中を見ながら、携帯の通話ボタンを押した。
 
 
                       * * *
 
 
「不可抗力だったの! アタシにミスはなかったわ! って聞いてんの! ちょっと! 後でって、アンタ! ……あんの野郎、切りやがった」
 
 舌打ちをしながら、携帯を下ろした。
 
「何が墓参りよ、あのクズが!」
 
 普段心掛けている喋り方を忘れて、口汚く罵る。
 と、それに気付き、慌てて辺りに視線を走らせた。
 
 じめっとした北校舎の裏は薄暗く、誰も近寄ろうとしない場所。
 どうやら、周囲に人はいないようだ。まずはひと安心。
 
「にしても、今日はヤバかった。まさか、姫堂先輩と鉢合わせするなんて」
 
 ぶつぶつと呟きながら考える。
 今日の失敗は警察が来る前に、急いで現場を去ろうとした点だ。
 もう少し待って、その他大勢と共に解散すべきだった。
 
「証拠を押さえられずに済んだだけでも良し、としないとダメか。でも、完全に目をつけられたよね。これ以上は命取り。あの女々しいクズ野郎には、もう付き合いきれないわ。とりあえず保険をかけておかないと。でも自信ないなぁ。こっちの餌に食いついてくれるといいんだけど」
 
 携帯のアドレス帳を検索。お目当ての番号を見つけると、通話ボタンを押した。
 
 

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