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日常をまったり紡ぐ近未来的日記..紅子の世界全壊です!       週末はオリジナルラノベの更新もしています


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紅子 縁璃

Author:紅子 縁璃
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恋するメドゥサ -08-
恋するメドゥサ -08-
 
 
【3】

 ■四月十九日(木)

 放課後、美術準備室。
 
 簡素な会議テーブルを挟んで、菜留と沙々子は向かい合っていた。
 
 沙々子はハードカバーを読み進め、菜留は文庫本を開いている。
 
 二人が部室に揃って、もう十分近く。
 菜留はちらちらと文庫本から視線を上げ、話しかける機会を伺っていた。
 
 不思議にカールした髪と切れ長の鋭い瞳。薄い唇には淡いルージュが乗り、肌は白く綺麗。
 ついつい見とれてしまいそうになる。
 
 ふと、沙々子が顔を上げた。
 まるで睨みつけるように目つきが険しくなる。
 
「どうした?」
「あ、いえ、別に」
 
 返答を濁す菜留に、沙々子は微笑んだ。
 
「色々とあったが、君が入部してくれたことは嬉しい。歓迎する」
 
 昨晩、ベッドの中で何度もシミュレートした言葉を口にする。
 幸い噛まなかった。
 
「あの、志穂のことはホントにすいませんでした。すごく迷惑掛けちゃって。普段はとてもいい奴なんですけど」
「その言い方は良くない。彼女は純粋に君の心配をしてくれたんだ。あれほど心配してくれる友人なんて滅多にできないぞ。大切にすべきだ。それに正直なところ」
 
 ハードカバーを閉じる。
 
「彼女との勝負は楽しかった。私も意外に勝負事が好きなようだ」
「姫堂先輩と勝負ってあまり似合わない言葉ですけどね」
「そうか」
「ええ、姫堂先輩ってなんとなく浮世離れした感じがありますから」
「浮世離れか、面白い言葉を使う。だが、どう考えても褒めてはいないな」
「いやいや、いい意味で、ですから」
「どう解釈すればいい意味になるのか、ゆっくり聞かせてもらおうか」
 
 他愛ない言葉のキャッチボールで笑い合う。
 
「ところで、菜留くん」
 
 一息ついたところで、沙々子が切り出した。
 歓迎挨拶のネクストプランだ。
 
「はい。なんですか?」
「その、姫堂という名は、少々長く使い辛くないか」
「そんなことないですよ」
「そうか」
 
 あからさまにガッカリする沙々子。
 
「あ、いえ。そう言われると言い難い気がしないでもないかなって」
「そうか」
 
 同じ「そうか」でも声のトーンが跳ね上がった。
 
「ふむ、そうだろうな。その、なんだ。もう少し呼びやすい形で呼んで貰ってもいい」
 
 少し寄り道はあったが、沙々子のシミュレート通りの展開だった。
 後は「沙々子先輩でいい」と告げるだけだ。
 
「呼びやすい形で、ですか」
「そうだ。例えば、そうだな。つまり、なんだ。あくまで、あくまでこれは一例だが、さ、さ」
「じゃあ、姫先輩って呼ばせてもらっていいですか?」
 
 菜留の提案に大きく肩を落とした。
 先程以上にガッカリ満載だ。
 
「あの、ごめんなさい。ちょっと馴れ馴れしかったですよね」
 
 焦る菜留。
 
「やっぱり、今まで通り姫堂先輩って呼んだ方が……」
「いや、それでいい」
 
 沙々子が納得したように頷く。
 
「焦り過ぎは良くない。特に慣れていないことは慎重過ぎるほど慎重に、だ」
 
 ぶつぶつと呟く沙々子に菜留は真意を確かめるべきか迷うが。
 
「では、この話は終わりだ」
 
 とあっさり切られてしまった。仕方なく菜留は次の話題を探す。
 
「そう言えば、月末から復習テストですね」
「そんなイベントもあったな」
 
 藤見野高校は緩い雰囲気を持つ学校だが、県下有数の進学校。
 各学期の中間期末と言った定期テストの他、春夏冬の長期休暇明けにテストがある。
 前学期の内容と休暇中の宿題がテスト範囲となる為、呼称は復習テスト。
 定期テストと違い成績に組み込まれる事はないが、廊下に採点結果が張り出される為、惨めな結果は避けたい。
 
「僕はあんまり自信ないんですよね」
「テストというのは努力の積み重ねだ。学んだことをその場で修めていけば、別段慌てることでもない」
「いいこと言いますね」
「ま、あくまで理想論だがな。それが実践できれば、誰も苦労はしない」
 
 涼しい顔で告げる沙々子。
 それは圧倒的な自信と実績を持つ者だけが許される態度だ。
 
「菜留くん、私が見る限り、君は頭の良い人間だ。成績もそれほど悪くあるまい」
「とんでもない。大体九十番から百番の辺りをふらふらしている程度です」
「十分優秀じゃないか」
 
 藤見野高校は全校生徒約千人。一学年辺り三百人ちょい。
 上位三割に属する菜留は優等生と言える。
 
「全然ですよ。志穂にだって負けてますし」
 
 志穂は常に菜留の十番程前をキープしている。
 保護者を自称するのは伊達ではない。
 
「それに姫先輩とは比べ物にならないですし」
「ん?」
 
 沙々子がこくんと首を傾げる。
 
「僕、変なこと言いました?」
「何か誤解をしているようだな」
「解ってます。勉強で大切なのはテストの結果ではなく、得た知識をどう使うかが肝心だってことですよね」
「んん?」
「それはテストの結果が良い人だから言える台詞なんです。先輩の見事な推理を見えれば、自ずから成績も優秀なんだって解ります。やっぱりトップなんですか?」
「買い被ってくれるのは嬉しいが、私はそれほど勉強ができる人間ではない」
「でも、一割には入っていますよね」
「あのな、菜留くん、私の成績は……」
「僕も姫先輩を目指して頑張ります」
 
 純粋な敬意と憧憬に輝く瞳に、沙々子はつい「あぁ、うん」と首肯してしまう。
 
 しかし次に菜留が発した一言に、沙々子は凍りついた。
 
「テスト結果、楽しみにしています。こっそり見に行きますから」
 
 実のところ、沙々子の談は謙遜でも過小評価でもない。
 前回、冬の復習テストの結果は二百四十三番だった。
 定期テストも似たような物で、いつも赤点ギリギリの四十から四十五点の辺り。
 
 彼女の余裕にも取れる態度は、ただの無関心からの物だ。
 
「こっそり見に来るだと? 私の成績を、か?」
「はい。今から楽しみです。僕も先輩に少しでも近付けるように頑張ります」
 
 沙々子は珍しく焦った。
 今更何弁明しても無駄。だからと言って、このまま放置するわけにもいかない。
 現実に直面した菜留には落胆しかないだろう。
 
「姫先輩って、残念な人だったんですね」
 
 冷めた目で告げる菜留を想像すると、胸がぐっと苦しくなる。
 
「こうなったら仕方ない」
「姫先輩、どうしたんです?」
 
 いきなり椅子から立ち上がった沙々子を、菜留が驚いて見上げる。
 
「菜留くん、明日からテスト終了までは部活を休止にする」
「いきなり、どうして……」
 
 言葉を止めた。
 理由なんて聞くまでもない。先輩は勉強に集中できるように計らってくれたのだ。
 その心遣いに応えなければならない。そう誓った。
 
 一方の沙々子は成績上位者に入る方法を考えていた。
 あまりに無謀だが、可愛い後輩の理想の為。そして自分が嫌われない為にも。やるしかない。
 つまり。
 
「これは勝負と言っても過言ではないな。ならば勝つしかあるまい」
 
 そう呟いて、静かに闘志を燃やし始めた。
 
 
                       * * *
 
 
 高井田智(たかいだ とも)は私立幸泉(こうせん)学院の三年生。
 すらりとした四肢とふわりとボリュームのある髪を持つ。
 丸みのある輪郭にぱっちりとした瞳が、実に愛らしい少女だ。
 
 今、智は二階の自室で至福の時間を過ごしていた。
 帰宅後シャワーを浴び、髪を纏め上げるとラフなパジャマ姿でベッドにごろり。
 大好きな少女マンガを読みつつ、甘いチョコクッキーを齧る。
 夕食までの時間、誰にも邪魔されない自分だけの世界。
 
 そんな幸せを遮って、ぶぶぶぶっと携帯が無粋に震えた。
 
「もう、なによ」
 
 柔らかそうな頬をぷっと膨らませながら、ディスプレイに目をやる。
 腐れ縁の悪友から。向こうからの電話は珍しいと思いつつ、通話ボタンを押す。
 
「もしもし。え? 今から? 別に構わないけど。あ、ちょっと待って。せめて用件くらいはさ」
 
 携帯を耳から離して、「切りやがった」と不満そうに呟く。
 コミュニケーション下手は相変わらずだなと思いながら、身体を起した。
 いくら長い付き合いの同性が相手でも、華の女子高生がパジャマでお出迎えでは格好がつかないのだ。
 
 シャツを脱いで、ズボンを下ろしたところで玄関のチャイムが鳴った。
 
「早い、早いよ」
 
 階下で母親の足音が玄関に向かう。
 
 智の家は広くない。
 母親に挨拶をして、ここまでやって来るのに三分も掛からないはず。急がねばならない。
 
 ズボンを脱ぎ捨てると、ベッドの反対側に置かれたクローゼットに向かう。
 まず、それなりに見栄えの良い部屋着に着替えるつもりだった。
 しかし、急ぐ智の視界の隅で何かが動いた。
 五センチほどの黒い何かがベッドの下に這っていったような。
 
「まさか。ご、ごき?」
 
 乙女にとって不倶戴天の敵である節足動物が思い浮かんだ。
 血の気が引いていくのを感じつつも、部屋の隅に常備してある殺虫剤を手に取る。
 深呼吸で覚悟を決め、四つん這いになってベッドの下を覗き込む。特に動く物は見当たらない。
 プシュプシュと殺虫剤を掛けてみるが、やはり反応はない。どうやら気のせいだったようだ。
 
「ふう、びっくりした」
「びっくりしたのはこっちだ」
 
 後ろからの声に反射的に振り返る。
 いつの間にか悪友が部屋に入り込んでいた。
 
 あちこちがカールした珍妙な髪型。冷たい印象を与えるメタルフレームの眼鏡。
 そのレンズの向こう、目尻の上がったきつい瞳が智を見下ろしていた。
 
 

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